第7話 絡まり合う心

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 その日の昼休みは雨が降ってきて、中庭には行けなかった。  恋野くんのことが気になったけど、それより私はずっと、優雅さんのことが気になっていた。  だから授業が終わると同時に、私は優雅さんの教室に行った。どうしても確認したかったんだ。もう一度、あの赤い糸を。  三年生の教室をのぞくと、優雅さんの姿が見えた。他の男子生徒となにかしゃべっている。 「やっぱり……見える」  優雅さんの指から伸びている赤い糸。あれは彼女の指につながっているの?  私はごくんと唾をのんだ。まだ見たことのない優雅さんの彼女。  学校の中で優雅さんが女の子といる姿を見たことがないから、きっとこの学校の生徒じゃないんだろう。  でもその彼女のことを、虹乃さんと恋野くんは知っている。  そしてもしかしたら、恋野くんの好きな人って――  私はポケットの中にある、虹乃さんと優雅さんを結ぶための糸を握りしめてから、優雅さんの指につながっている糸をたどり始めた。
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