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「ごめんなさいね。引きとめたりしちゃって」
「いえ、いいんです。私こそ、ずうずうしくすみません」
なにか用かと聞かれた私は、咄嗟に嘘をついてしまった。親戚のお見舞いに来て帰ろうとしたところだけど、エレベーターがどこだかわからなくて迷っていたと。
そうしたら結衣さんは親切に方向を教えてくれた。そして私が頭を下げてあわてて帰ろうとしたら、少し考えてこう言ったのだ。「もし時間があるならお話しない?」と。
結衣さんは長い間この病院に入院しているため、同じくらいの女の子と話せず退屈していたそうだ。私の制服を見て、自分も同じ学校の生徒なのだと話してくれた。
「あの、結衣さんは何年生なんですか?」
「三年生、になるはずだったんだけど、私一年間も学校休んでて。二年生をやり直さなきゃいけないの」
そうだったのか。だから学校で彼女のことを見たことがなかったんだ。
「私ね、来週には退院する予定なの。でも留年するくらいなら、学校辞めたいと思ってて……だって二年生には友だちもいないし、すごく心細くて……」
「え……」
私は結衣さんの顔を見る。白くて細くて、見るからにか弱そうで、とても綺麗な人。
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