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「あ、あの。私がこんなこと言うのもなんですけど……学校辞めないでください。私二年生だから、結衣さんが学校に来たら友だちになります」
結衣さんは少し驚いた顔をしたあと、にっこり微笑んでくれた。
「ありがとう。実は幼なじみの男の子にもね、学校辞めるなって言われてて」
「え、幼なじみの男の子?」
「うん。恋野大雅っていう子なんだけど、知らないよね?」
知ってる。知ってる。知ってます!
心の中で叫んだ私の耳に、ドアをノックする音が聞こえた。「はい、どうぞ」と結衣さんが澄んだ声で言うと、ドアがガラッと音を立てて開いた。
「えっ」
その瞬間、私は驚いて立ち上がってしまった。だってそこには恋野くんが立っていたから。
「は? なんでお前ここにいるんだよ!」
恋野くんが大声で言った。結衣さんがあわてて指を口に当て「しー」っとなだめる。
私は肩をすくめて縮こまった。
「もしかして、大雅と紅子ちゃん、知り合いだったの?」
「知り合いっていうか……なんていうか……」
恋野くんが病室の中にずんずん入ってきて、私の顔をのぞきこみ、同じことをもう一度言った。
「なんでお前、ここにいるの?」
私はさらに肩をすくめる。
「あのね、紅子ちゃんは親戚のお見舞いに来てて……」
「親戚のお見舞い?」
恋野くんが私のことをにらみつける。全然信じてない顔で。だけどここで赤い糸の話なんてできない。
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