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「なんでついてくるんだよ」
病院の外で恋野くんに追いつくと、恋野くんはふてくされた顔で言った。
「ていうか、お前なんであそこにいたわけ?」
「それは……」
「親戚のお見舞いなんて嘘だろ? もしかして朝見えたとか言ってた優雅の糸を、たどって来た?」
なかなか鋭い恋野くん。私はこくんとうなずく。
「じゃあつながってるんだ、まだ。その糸」
恋野くんが安心したようにつぶやいて、小さく息を吐いた。
私はそんな恋野くんの横顔を見ながら考える。
恋野くんはどうしたいんだろう。糸が切れて欲しくないのだろうか。でも……
大きな川に架かる橋の上で、私は立ち止まって言った。
「恋野くんの好きな人って……結衣さんじゃないの?」
私の声に恋野くんも足を止め、「は?」と振り向く。胸の奥がきりっと痛む。
「なんでそうなる?」
「そう思ったから」
「結衣は優雅の彼女だろ?」
「でも好きになるのは自由だよ」
恋野くんが黙った。歩道で立ち止まる私たちの横を、何台もの車が通り過ぎて行く。
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