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でもよく考えたら、そんな都合の良いこと、あの猫神さまが許すわけがない。
頼まれたら断れないと言っていたから、虹乃さんの願いは叶えようとするだろうし、私たちがそれを放棄したら、この糸はきっと切ってもらえない。
そう思ったのに恋野くんは、「明日の昼休みになんとかする」と言い張る。「なんとかする」ってなにをするつもりなんだろう。不安しかない。
翌日の昼休み、私は急いで中庭へ走った。すると渡り廊下を渡っていく二人の後ろ姿が見えた。恋野くんと虹乃さんだ。
私は息をのみ、そのあとをそっとついていく。二人は奥の校舎の誰もいない、化学室の中に入っていった。私はドアの隙間から、中の様子をそうっとのぞいた。
「なんなの、大雅。こんなとこに呼び出して」
虹乃さんが恋野くんの前で首をかしげる。すると恋野くんがいきなり言った。
「虹乃、お前さ、優雅のこと好きなの?」
「は?」
「優雅のこと好きなのかよ?」
虹乃さんの表情が曇る。私はひやひやしてしまう。
「なんでそんなこと聞くのよ」
「だってお前、最近優雅の周り付きまとってるよな? やたらうろちょろと」
私はこの前、優雅さんに駆け寄っていった虹乃さんの姿を思い出す。もしかしたら恋野くんも、虹乃さんのそんな姿を見ていたのかもしれない。
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