第7話 絡まり合う心

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 猫神さまは迷うことなく、「にゃあああ」と長く一回鳴いた。すると糸がつながった日と同じように強い風が吹き、木々がざわめき始めた。肩をすくめた私の前に、やっぱりあの日と同じ桜の花びらが一枚……ひらり。 「あ……」  その花びらが糸に触れた途端、それはぷつんとあっけなく切れた。そしてみるみるうちに糸は短く縮んで、やがて跡形もなく消えてしまった。 「にゃあ」  見ると普通の三毛猫が私たちを見上げてから、森の奥に走り去った。  私はなにもなくなった自分の小指を見下ろす。 「よかったな」  隣から声が聞こえた。顔を上げると恋野くんが、やっぱりなにもついていない指を私に見せた。 「これで紅子は自由だ」  私はぐっと唇を噛みしめる。なにかしゃべったら、泣いてしまいそうだった。 「じゃあ、俺帰るから。お前も気をつけて帰れよ」  なんとかこくんとうなずくと、恋野くんは私をじっと見てから、なにも言わないで神社を出て行った。  その姿が見えなくなると、私はすとんっと地面にしゃがみ込んだ。  もう一度、指を見る。なんにもついていない指。もう片方の手で触れてもこすっても、なにかついている感覚はない。  私と恋野くんの縁は、ぷっつりと跡形もなく、切れてしまったのだ。
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