第8話 君が幸せになるように

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「紅子? おーい、紅子!」  声に気づいてはっとする。見ると私の机の周りに、春菜と葉月が立っていた。 「どうしたの、紅子。ぼうっとして」 「もう昼休みだよ? 中庭行かなくていいの?」  中庭……もう行かなくていいんだ。もう恋野くんと会う必要はないんだから。 「うん……」 「なんかへんだよ、紅子」 「うんうん、恋野先輩と喧嘩でもしたの?」  私は小さく首を振る。そんなんじゃないんだ。喧嘩のほうがまだよかった。  ぐすっと鼻をすすって、また涙が出そうになった時、私はそれに気がついた。 「え……」  目の前に見える春菜と葉月の小指に、赤い糸がついている。それはどこまでも長く伸び、教室の外へと続いている。 「糸っ……なんで見えるの?」 「え? 糸?」 「紅子ちゃん……大丈夫?」  春菜と葉月が心配そうに私を見る。  やっぱり見える。二人についている赤い糸。  私ははっと自分の手を見た。だけどもちろん、私の指にはついていない。  私たちの糸が切れて、猫神さまとも縁を切ったのに、私にはまだ赤い糸が見えるの? その能力だけは、まだ残ってるってこと?  もしかしたら恋野くんにも見えるのかな?  そう思ったらいてもたってもいられず、私は椅子から立ち上がった。 「ごめん、ちょっと中庭行ってくる!」 「あ、うん、いってらっしゃい……」  唖然としている二人を残し、教室を飛び出す。  私は恋野くんに会いたかった。昨日別れたばかりなのに、もう会いたくてたまらなかった。
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