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ほっぺを両手でぱんぱんっと叩いて、にっと一人で笑ってみる。
うん。なんとか大丈夫そうだ。昨日はご飯も食べずに眠ってしまったけど、目覚めたら足の痛みも治っていたし、ちょっと元気が出た気がする。学校に着いたら、笑顔で春菜に報告しなくちゃ。
私が桜庭先輩に告白するって言ったら、春菜はすごく応援してくれた。一緒にチョコを作ってくれて、チョコを渡しに行く前も緊張で心臓が飛び出しそうな私に、「頑張って!」と声をかけてくれた。
だから結果はフラれちゃったけど、春菜には応援してくれてありがとうって、笑顔で伝えたいんだ。
そんなことを考えながら歩いていると、見覚えのある男の人の姿が見えた。
「あ、あれは……」
昨日の茶髪男だ。私と同じ制服を着て、ふらふらと神社の中へ入っていく。
なにやってるんだろう……ていうかあの人、この辺に住んでるの? あんなところに寄り道して、学校行かなくていいんだろうか。まさかまた喧嘩でもするつもりじゃ……
なんだか心配になってきて、神社の前で足を止めた。茶髪男の背中が、吸い込まれるように森の中に入っていく。
その時私の耳に、かすかな声が聞こえてきた。
『お前も来るのにゃ』
「え?」
気がつくと、私は見えない糸に引っ張られるように、神社の鳥居をくぐり抜けていた。
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