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「まさか……結衣さんと別れてしまったんですか?」
「え……」
「結衣さんと別れたんですか?」
気持ち悪いものでも見るような目で私を見てから、優雅さんがぽつりと言った。
「僕と結衣が付き合ってること、大雅から聞いたのか?」
まさか糸を伝って行ったとは言えなくて、私はあいまいにうなずいた。
すると優雅さんが、小さくため息をつき答えてくれた。
「そうだよ。結衣とは昨日別れた」
「どうして……」
私は優雅さんの手を離す。
虹乃さんは優雅さんと付き合おうとしたけどやめた。猫神さまも取り消されたと言っていた。だから虹乃さんが二人の仲を壊したわけではない。
それなのに結衣さんと別れてしまったなんて……どうして……
優雅さんは小さくため息をついて、私に言った。
「僕から頼んだんだよ。別れて欲しいって」
「え……」
「結衣が悪いわけじゃない。僕が……つらくなってしまったからなんだ」
「つらくなった?」
優雅さんはふっと私に笑いかけて、後ろを向いた。
「もういいだろ。これくらいで勘弁してくれよ」
そして一人で校舎の中へ入っていく。私はその背中を見送ってから、三年生の教室へ向かって走った。
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