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「恋野くん、いますか!」
恋野くんの教室でそう叫んだ私は、たぶんものすごく必死な顔をしていたんだと思う。何事かと上級生たちがみんな私に注目して、教室の中がざわっと揺れた。
「恋野だったらここにいるけど……」
そんな私に気づいてくれたのは、桜庭先輩だった。桜庭先輩は親切に、窓際の席で机に突っ伏して寝ていた恋野くんを起こしてくれた。
「恋野、呼ばれてるよ」
寝ぼけた顔で起き上がった恋野くんのもとへ、私は走った。ここは三年生の教室なのに、もうそんなことは忘れていた。
「恋野くんっ、来て!」
「は? え? なに? 紅子?」
まだ寝ぼけている恋野くんを立たせて引っ張った。唖然としている人たちをかき分けて、そのまま廊下の端まで連れて行った。
「大変なの」
「なにがだよ?」
無理やり起こされた恋野くんは、機嫌悪そうに寝ぐせのついた頭をかいた。
「優雅さんと結衣さんが別れちゃったの」
恋野くんはぽかんと私の顔を見た。
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