第8話 君が幸せになるように

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「私ね、まだ赤い糸が見えるんだ。恋野くんも見える?」 「もう見えねぇよ、そんなの。桜庭の指にもついてなかったし」  桜庭先輩の指にはちゃんとついていた。恋野くんには見えないんだ。私だけしか見えないんだ。 「あ、あのね。優雅さんの指に、赤い糸がもうついてないの」 「嘘だろ……そんなのありえねぇ……」 「ほんとなの! 私が聞いたら答えてくれた。僕から別れて欲しいって頼んだんだって」  恋野くんが頭にのせていた手を、ゆっくりと下ろした。 「なんで……」 「わかんないんだけど……結衣さんが悪いわけじゃないって。僕がつらくなったんだって」 「なんだそれ。ふざけんな」  恋野くんはそうつぶやくと、私の腕をつかんだ。 「あいつんとこ行くぞ! お前も来い!」 「え、ど、どこに?」 「あいつのいるところは、わかってる」  私の手をつかんだまま、恋野くんが走り出した。
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