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「私ね、まだ赤い糸が見えるんだ。恋野くんも見える?」
「もう見えねぇよ、そんなの。桜庭の指にもついてなかったし」
桜庭先輩の指にはちゃんとついていた。恋野くんには見えないんだ。私だけしか見えないんだ。
「あ、あのね。優雅さんの指に、赤い糸がもうついてないの」
「嘘だろ……そんなのありえねぇ……」
「ほんとなの! 私が聞いたら答えてくれた。僕から別れて欲しいって頼んだんだって」
恋野くんが頭にのせていた手を、ゆっくりと下ろした。
「なんで……」
「わかんないんだけど……結衣さんが悪いわけじゃないって。僕がつらくなったんだって」
「なんだそれ。ふざけんな」
恋野くんはそうつぶやくと、私の腕をつかんだ。
「あいつんとこ行くぞ! お前も来い!」
「え、ど、どこに?」
「あいつのいるところは、わかってる」
私の手をつかんだまま、恋野くんが走り出した。
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