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恋野くんは私を連れて渡り廊下を走って、階段をのぼり屋上の前まで来た。ここは普段鍵がかかっていて、立ち入り禁止のはず。けれどためらいもせずに、恋野くんはそのドアを勢いよく開ける。
「え、どうして?」
ドアの外には優雅さんがいた。一人で本を読みながらお弁当を食べていた。
「あいつ生徒会の権力を悪用して、勝手に屋上のスペアキー作って持ってんだ」
「ええっ」
「そんで昼はいつも一人でここにいる」
驚く私に、優雅さんの声が聞こえた。
「な、なんだ、お前ら」
「おいっ、結衣と別れたってほんとか?」
怒鳴りながら優雅さんに向かっていく恋野くん。私はまたひやひやする。
優雅さんはそんな恋野くんを見て、深くため息をついた。
「まったく、なんなんだよ、いったい。僕が結衣と別れただけで、どうしてお前たちがそんなに騒ぐんだ?」
「うるせぇ! なんで別れたんだよ!」
恋野くんがいきなり優雅さんの胸元をつかんだ。私はあわててそばへ駆け寄る。
「恋野くんっ、やめて」
「そうだ。お前はすぐそうやって手を出す。どうして手を出す前に頭で考えないんだ」
「は? 俺はお前のそういう理屈っぽいところが大っ嫌いなんだよ!」
「お前は昔っからそうだよな。口で言い返せなくなると、すぐにわめくか暴力をふるう」
恋野くんがこぶしを振り上げた。私は必死に飛びついてそれを止める。
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