第8話 君が幸せになるように

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 恋野くんは私を連れて渡り廊下を走って、階段をのぼり屋上の前まで来た。ここは普段鍵がかかっていて、立ち入り禁止のはず。けれどためらいもせずに、恋野くんはそのドアを勢いよく開ける。 「え、どうして?」  ドアの外には優雅さんがいた。一人で本を読みながらお弁当を食べていた。 「あいつ生徒会の権力を悪用して、勝手に屋上のスペアキー作って持ってんだ」 「ええっ」 「そんで昼はいつも一人でここにいる」  驚く私に、優雅さんの声が聞こえた。 「な、なんだ、お前ら」 「おいっ、結衣と別れたってほんとか?」  怒鳴りながら優雅さんに向かっていく恋野くん。私はまたひやひやする。  優雅さんはそんな恋野くんを見て、深くため息をついた。 「まったく、なんなんだよ、いったい。僕が結衣と別れただけで、どうしてお前たちがそんなに騒ぐんだ?」 「うるせぇ! なんで別れたんだよ!」  恋野くんがいきなり優雅さんの胸元をつかんだ。私はあわててそばへ駆け寄る。 「恋野くんっ、やめて」 「そうだ。お前はすぐそうやって手を出す。どうして手を出す前に頭で考えないんだ」 「は? 俺はお前のそういう理屈っぽいところが大っ嫌いなんだよ!」 「お前は昔っからそうだよな。口で言い返せなくなると、すぐにわめくか暴力をふるう」  恋野くんがこぶしを振り上げた。私は必死に飛びついてそれを止める。
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