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「あいつ……バカだな」
恋野くんがかすれた声でつぶやいた。
「あいつはバカだ。バカすぎる」
「恋野くん?」
「だってそうだろ? 結衣は優雅のことが好きだって言ってるんだ。俺は何度も聞いてるから知ってる。だから堂々としてりゃいいじゃん。俺がなにをしたっていうんだよ。勝手にビビってんじゃねぇよ。結衣を泣かすんじゃねぇよ」
「うん……そうだよね」
恋野くんの中でも、きっと優雅さんの存在は大きくて、文句を言っていてもどこかで尊敬していて……そうやって二人はなんとかバランスをとっているんだと思う。
この二人は、そういう兄弟なんだ。きっと。
「俺、あのデブ猫に頼むよ」
「え、猫神さまに? なにを?」
「優雅と結衣の縁結びをしてくれって、俺からお願いする」
「縁結び……」
「そんで赤い糸もらって、俺があいつらを結び付ける。逃げようが泣こうがわめこうが、絶対結び付けてやる」
「恋野くん……」
私は恋野くんの顔を見つめて言う。
「私も……やる。私も一緒にやらせて」
私の顔をじっと見た恋野くんが、いつもみたいににっと笑った。
「最初から頼むつもりだったよ。お前にも」
その声が胸の奥に沁み込んで、なぜだか涙が出そうになった。
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