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放課後、恋野くんと猫神さまの神社に行った。境内はあいかわらず寂れていて、ひと気がない。
恋野くんは途中で買った焼き芋をお社の前に置き、ぱんぱんっと手を叩いて、目を閉じた。
「お願いします。優雅と結衣の縁を、もう一度結び直してください」
恋野くんの真剣な横顔を見て、私も同じように手を合わせた。
神社に生ぬるい風が吹く。だけど猫神さまは現れない。
「は? なんであいつこういう時に限って出て来ねぇの?」
目を開けた恋野くんがふてくされた顔で言う。
「えっと……キャットフードとかのほうがよかったのかな?」
「じゃあお前、キャットフード買ってきてくれ」
「えっ、なんでよ。恋野くんが神頼みするって言ったんでしょ?」
「お前も協力するって言ったじゃん。だいたい俺たち離れられな……」
恋野くんが小指を差し出し、「あっ」と声を詰まらせた。
「そっか。もう切れてたんだっけ。お前とは」
なにもついていない指を見たあと、恋野くんは手をポケットにつっこんだ。
「とにかくお前、買ってこい」
「やだ。命令しないでください」
「は? お前いつからそんなエラソーなこと言えるようになったんだ?」
恋野くんが私をにらんだけど、私は頬をふくらませた。
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