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『こほん』
そんな私たちの耳に、聞き覚えのある咳払いが聞こえた。
『なにをやってるのにゃ。お前らは』
「あっ、猫神さま!」
いつの間にか猫神さまが、お社の前に立っていた。焼き芋を手に持って。
『お前たちとは縁を切ったはずなのにゃ』
「だからこうやって貢物を持ってきて、頼んでるんじゃん。なぁ、俺の願いを聞いてくれよ」
私は恋野くんの腕を肘でつつく。
「だめだよ、恋野くん。神さまにお願いするのに、そんな言い方」
「は? 俺たちいままで、こいつにどんだけこき使われてきたんだよ。このくらい言ってもいいだろ?」
『こほん』
また猫神さまが咳ばらいをした。
『最近は願い人が少なくて、退屈していたのにゃ。この前の件もキャンセルされたしにゃ』
「だったら俺の願い……」
『仕方ないにゃ。ニャーは頼まれると断れない性格なのにゃ。お前のことは気に入らにゃいが』
猫神さまが肉球の手を上げて、それをふわっと下ろす。私たちの前に赤い糸が落ちてきて、それを恋野くんがキャッチした。
『それで『恋野優雅』と『小鳥遊結衣』の縁を結んでくるにゃ』
「了解!」
恋野くんがぐっと糸を握りしめ、私ににっと笑いかけた。
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