第8話 君が幸せになるように

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『こほん』  そんな私たちの耳に、聞き覚えのある咳払いが聞こえた。 『なにをやってるのにゃ。お前らは』 「あっ、猫神さま!」  いつの間にか猫神さまが、お社の前に立っていた。焼き芋を手に持って。 『お前たちとは縁を切ったはずなのにゃ』 「だからこうやって貢物を持ってきて、頼んでるんじゃん。なぁ、俺の願いを聞いてくれよ」  私は恋野くんの腕を肘でつつく。 「だめだよ、恋野くん。神さまにお願いするのに、そんな言い方」 「は? 俺たちいままで、こいつにどんだけこき使われてきたんだよ。このくらい言ってもいいだろ?」 『こほん』  また猫神さまが咳ばらいをした。 『最近は願い人が少なくて、退屈していたのにゃ。この前の件もキャンセルされたしにゃ』 「だったら俺の願い……」 『仕方ないにゃ。ニャーは頼まれると断れない性格なのにゃ。お前のことは気に入らにゃいが』  猫神さまが肉球の手を上げて、それをふわっと下ろす。私たちの前に赤い糸が落ちてきて、それを恋野くんがキャッチした。 『それで『恋野優雅』と『小鳥遊結衣』の縁を結んでくるにゃ』 「了解!」  恋野くんがぐっと糸を握りしめ、私ににっと笑いかけた。
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