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「うわぁ!」
次に聞こえたのは叫び声だった。
はっと我に返って目の前を見ると、さっきの茶髪男が私の足元でしりもちをついている。
「ど、どうしたんですか!」
「お、お前っ、なんでここに……てか、あれ!」
茶髪男が私を見てから、あわてたようにお社のほうを指さす。私が顔を向けると、そこには二本足で立っている大きな猫の姿があった。
「えっ、猫?」
まん丸い顔の、もふもふと太った三毛猫……あれは、昨日追いかけてきた猫じゃない?
ただ大きさは、昨日の猫の二倍以上ある。石段の上の、さらにお社の高いところから、すごい迫力で私たちを見下ろしている。
私が唖然として突っ立っていると、猫の口がゆっくりと開いた。
『そこの男、よくもニャーのもらったチョコレートを食いおったにゃ?』
猫が……人間の言葉をしゃべってる?
驚きのあまり、声も出せない私の足元で、茶髪男もお尻をついたままぽかんとしている。
『神さまがもらったものを食べるとは、お前何様のつもりにゃ』
「え、えっと……あんた神さま? にゃーにゃー言ってるけど」
茶髪男が指で猫を差しながらそう言った。私の背中にひやっと汗が流れる。
『な、なんなのにゃ、お前は! 神に向かって失礼にゃぞ!』
「だ、だって、神っていうか……まんま猫じゃん。でかいけど。なぁ?」
後ろを振り向いた茶髪男が、私に同意を求める。私はあわてて首を横に振る。
「そ、そんなこと言ったらだめだよ! ここは猫神さまの神社なんだから、きっと本当の神さまなんだよっ」
私がそう言ってちらりとお社のほうを見ると、猫が満足そうにうなずいている。
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