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「なにぐずぐずしてるんだよ」
昼休みに中庭に行ったら、恋野くんがイライラした様子で言った。
「まだ糸結んでねぇのかよ」
「だって……」
どうしてだろう。元気のない結衣さんのために、早く結んであげなきゃって思うのに。
「ほんとに……恋野くんはそれでいいの?」
「は? なんだよ、いまさら」
「だって……」
私はポケットから糸を取り出して、恋野くんに言う。
「もしこの糸で、結衣さんと恋野くんを結べば、二人は結ばれるんじゃないの?」
恋野くんがぽかんとした顔で私を見てから、「バーカ」と私に言った。
「いまさら、そんなこと考えてねぇって」
「でも……」
「わかった。もう糸はいいから、明日の昼休み、結衣を屋上に連れてこい」
「え、糸はいいって……」
恋野くんが私の手から糸を奪う。
「俺が二人の指に結ぶから。お前は結衣を連れてこい」
「う、うん。わかった」
恋野くんは赤い糸をポケットにつっこんで、私に笑いかけた。
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