第8話 君が幸せになるように

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「なにぐずぐずしてるんだよ」  昼休みに中庭に行ったら、恋野くんがイライラした様子で言った。 「まだ糸結んでねぇのかよ」 「だって……」  どうしてだろう。元気のない結衣さんのために、早く結んであげなきゃって思うのに。 「ほんとに……恋野くんはそれでいいの?」 「は? なんだよ、いまさら」 「だって……」  私はポケットから糸を取り出して、恋野くんに言う。 「もしこの糸で、結衣さんと恋野くんを結べば、二人は結ばれるんじゃないの?」  恋野くんがぽかんとした顔で私を見てから、「バーカ」と私に言った。 「いまさら、そんなこと考えてねぇって」 「でも……」 「わかった。もう糸はいいから、明日の昼休み、結衣を屋上に連れてこい」 「え、糸はいいって……」  恋野くんが私の手から糸を奪う。 「俺が二人の指に結ぶから。お前は結衣を連れてこい」 「う、うん。わかった」  恋野くんは赤い糸をポケットにつっこんで、私に笑いかけた。
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