第8話 君が幸せになるように

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 結衣さんの手を握り、薄暗い階段をのぼりながら、ドキドキしていた。  この上には優雅さんがいるはず。別れた優雅さんに会ったら、結衣さんはどんな反応をするだろう。結衣さんを騙してしまって、心が痛む。  だけど恋野くんがそうしたいなら。私は恋野くんの力になりたい。  ドアを開けると、明るい世界が目の前に開け、思わずまぶたを閉じた。そんな私の耳に、かすかな声が聞こえた。 「あ……」  私は目を開けて屋上を見る。そこには本を読みながらお弁当を食べている、優雅さんの姿が見えた。 「優雅……」  結衣さんが小さくつぶやく。つないだ手が震えているのがわかった。優雅さんも驚いた顔でこっちを見つめている。  大丈夫、きっと大丈夫。二人はまだ想い合っているんだから。 「あ、えっと、せっかくだから一緒にお昼……」  結衣さんの手が私から離れた。そして優雅さんから顔をそむける。 「私、ここでは食べたくない」 「え、あのっ、ちょっと待ってください!」  それはだめだ。二人はここでちゃんと話さなくちゃだめなんだ。私はあわてて結衣さんの手をつかみ、引きとめる。 「もしかして、紅子ちゃん、知ってたの?」 「え……」 「私と優雅が付き合ってて別れたこと。大雅から聞いた?」 「い、いえ、私は……」 「知ってるよ。この子は」  優雅さんが立ち上がって、こっちに来た。  まずい。いろいろバレてる。
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