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結衣さんの手を握り、薄暗い階段をのぼりながら、ドキドキしていた。
この上には優雅さんがいるはず。別れた優雅さんに会ったら、結衣さんはどんな反応をするだろう。結衣さんを騙してしまって、心が痛む。
だけど恋野くんがそうしたいなら。私は恋野くんの力になりたい。
ドアを開けると、明るい世界が目の前に開け、思わずまぶたを閉じた。そんな私の耳に、かすかな声が聞こえた。
「あ……」
私は目を開けて屋上を見る。そこには本を読みながらお弁当を食べている、優雅さんの姿が見えた。
「優雅……」
結衣さんが小さくつぶやく。つないだ手が震えているのがわかった。優雅さんも驚いた顔でこっちを見つめている。
大丈夫、きっと大丈夫。二人はまだ想い合っているんだから。
「あ、えっと、せっかくだから一緒にお昼……」
結衣さんの手が私から離れた。そして優雅さんから顔をそむける。
「私、ここでは食べたくない」
「え、あのっ、ちょっと待ってください!」
それはだめだ。二人はここでちゃんと話さなくちゃだめなんだ。私はあわてて結衣さんの手をつかみ、引きとめる。
「もしかして、紅子ちゃん、知ってたの?」
「え……」
「私と優雅が付き合ってて別れたこと。大雅から聞いた?」
「い、いえ、私は……」
「知ってるよ。この子は」
優雅さんが立ち上がって、こっちに来た。
まずい。いろいろバレてる。
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