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「失礼します」
カラカラと静かに引き戸を開けて、保健室の中をのぞいた。窓からかすかな風が吹いて、白いカーテンが揺れる。
ベッドの脇に、恋野くんが座っているのが見えた。私は音をたてないようにして、そっと近づく。
ベッドには結衣さんが横たわっていた。さっきより顔色はよくなったみたいで、静かに目を閉じて眠っているようだった。
恋野くんはそんな結衣さんの顔を黙って見つめていた。すごく切ない目で。
「恋野くん」
私が声をかけると、恋野くんがそっと顔を上げた。
「結衣さん、大丈夫?」
私の声に恋野くんがうなずく。
「ああ、さっき保健の先生が診てくれた。久しぶりの学校で緊張もあったし、疲れも出たんだろうって。結衣の親に迎えに来てもらうよう連絡してくるって、いま職員室に行った」
「そっか。よかった」
私はほっと胸をなでおろし、恋野くんのそばに腰かける。
結衣さんは長いまつげを伏せて眠っていた。
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