第8話 君が幸せになるように

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「優雅さんのことも心配ないからね。ちゃんと結衣さんに想いを伝えなさいって、私がガツンと一発ぶん殴っておいたから」 「え?」  こぶしを握って笑いかけると、恋野くんもあきれたように笑った。 「暴力はいけないんじゃなかったっけ?」 「今日だけはいいの。おかげで優雅さんも目が覚めたみたいだし」 「はっ、俺の相棒は頼りになるな」 「任せてよ」  恋野くんが乾いた声で笑って、また結衣さんを見下ろす。とても大切な人を見守るように。 「恋野くん……」  でも恋野くんはやめないだろう。結衣さんと優雅さんの縁結びをするのを、やめないだろう。 「赤い糸を……」  私の声に、恋野くんはポケットから糸を取り出した。  結衣さんと優雅さんが結ばれる、運命の赤い糸を。  そして恋野くんは、壊れ物にでも触れるようにそっと、結衣さんの手をとる。 「どうか……」  恋野くんが結衣さんの小指に、赤い糸を結び付けていく。 「どうか結衣が幸せになれますように……」  そうつぶやいた恋野くんの声は、切なくて、とてもやさしかった。
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