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「優雅さんのことも心配ないからね。ちゃんと結衣さんに想いを伝えなさいって、私がガツンと一発ぶん殴っておいたから」
「え?」
こぶしを握って笑いかけると、恋野くんもあきれたように笑った。
「暴力はいけないんじゃなかったっけ?」
「今日だけはいいの。おかげで優雅さんも目が覚めたみたいだし」
「はっ、俺の相棒は頼りになるな」
「任せてよ」
恋野くんが乾いた声で笑って、また結衣さんを見下ろす。とても大切な人を見守るように。
「恋野くん……」
でも恋野くんはやめないだろう。結衣さんと優雅さんの縁結びをするのを、やめないだろう。
「赤い糸を……」
私の声に、恋野くんはポケットから糸を取り出した。
結衣さんと優雅さんが結ばれる、運命の赤い糸を。
そして恋野くんは、壊れ物にでも触れるようにそっと、結衣さんの手をとる。
「どうか……」
恋野くんが結衣さんの小指に、赤い糸を結び付けていく。
「どうか結衣が幸せになれますように……」
そうつぶやいた恋野くんの声は、切なくて、とてもやさしかった。
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