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数日学校を休んだ結衣さんが登校してくると、春菜や葉月が駆け寄った。結衣さんは少し照れくさそうに「心配かけてごめんね」と笑う。
よかった。ずいぶん元気そう。少しずつ結衣さんが、また学校に慣れていければいいなって思った。
「紅子ちゃん」
三時間目が終わったあと、結衣さんに声をかけられた。
「この前は……ほんとうにごめんね」
私は結衣さんの前で首を横に振る。
「いえ。元気になってよかったです。でも無理はしないでくださいね」
そう言って笑った私を見て、結衣さんはちょっと寂しそうにうつむく。
「私ってほんと情けないの。小さい頃からずっとこんな感じで」
私は恋野くんが言った言葉を思い出す。結衣さんは小さい頃からずっと病弱だったって。
「みんなが普通にできること、どうして私はできないんだろうって。そんな自分が嫌で無理して頑張って、結局倒れて迷惑かけちゃう。ダメだね、ほんと」
うつむいたまま、結衣さんが頬をゆるめる。
「優雅は私にやさしくしてくれたけど、いつかこんな私が彼の重荷になるんじゃないかって、ずっと怖かった。自分に自信がなかったの」
「結衣さん……」
教室の中にクラスメイトたちの笑い声が響く。男子がふざけて走り回って、女子に怒られたりしている。
「だからね、優雅に別れたいって言われた時、仕方ないって思っちゃった。こんな私だったら、仕方ないって」
私は結衣さんの声を聞きながら、ぎゅっと手を握りしめる。
違うよ。そんなことないよって言いたいのに、言葉がうまく出てこない。
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