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「この前倒れたあとも、やっぱり私はダメな人間だって落ち込んだ。もう学校行くの辞めようって思った。そうしたら今朝、大雅が迎えに来てくれたの」
「え……」
「大雅がね、『結衣、一緒に学校行こう』って。子どもみたいに誘ってくれた」
結衣さんが静かに顔を上げた。そして泣きそうな顔で微笑む。
「私、また倒れるかもしれないから怖くて行けないって言ったんだけど。大雅が言うの。倒れてもいいじゃんって。そしたらまた俺が迎えにくるからって」
胸がぎゅうっと痛くなった。結衣さんの前で私まで泣きそうになる。
「私ね。小さい頃からずっと大雅に助けてもらってたの。大雅にはずっと、勇気をもらってた」
結衣さんの声が私の胸に沁み込む。
ああ、結衣さんには伝わっていた。恋野くんのやさしさが、ちゃんと伝わっていた。
「だから私、勇気を出そうと思う。勇気を出して自分の気持ちを、優雅に伝えようと思う」
結衣さんが、まっすぐ前を向いてそう言った。いつもより、力強い声で。
「今日の昼休み、優雅に会いに行くね」
「うん……」
私は喉の奥から声を押し出す。胸がすごく苦しい。でも私は縁結びの神さまの使いだから……
「私、結衣ちゃんのこと応援してる。頑張って」
結衣さんが私の前で微笑んだ。
「紅子ちゃん、ありがとう」
結衣さんの声が、チャイムの音にかき消された。
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