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昼休みになった途端、私は教室を飛び出した。優雅さんに会いに行く結衣さんより早く、私は屋上へ行かなければいけない。そして結衣さんの指についた糸を、優雅さんの指に結び付けるんだ。
恋野くんにも連絡したかったけど、三年生の教室に寄る時間はない。私は屋上への階段を駆け上り、そっとドアを開いた。
「えっ」
そこで私は足を止める。屋上では恋野くんが寝転がって、ぼんやり空を眺めていた。
「な、なんで恋野くんがここにいるの! 優雅さんは?」
恋野くんは私を見て、不思議そうな顔で起き上がる。
「優雅はいねぇよ。俺をこんなところに呼び出して、『いまから結衣に告白してよりを戻してくる』なんてわざわざ宣言してさぁ。なんでいちいち俺にそんなこと……」
「優雅さんは結衣さんに会いに行ったの?」
「ああ、結衣のクラスに……ってか、なんでお前がここにいるんだよ!」
やっと気づいたように恋野くんが怒鳴る。
「結衣ちゃんが優雅さんに会いに行くって言ったの! だから私結衣ちゃんの先回りしようと思ってここに……」
「は? じゃああいつらどっかで会っちゃうじゃん。俺、お前が結衣のそばにいれば糸結んでくれると思ってのんびりしてたのに」
「なんでのんびりするのよ! 今日に限って!」
「お前のこと信用してたんじゃん! 頼りになる相棒だと思って……」
私は恋野くんの腕をぐっとつかんで、引っ張り上げる。
「とにかく行こう! 結衣ちゃんの糸を優雅さんに結び付けなきゃ」
私の声に恋野くんは「そうだな」ってうなずいた。
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