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渡り廊下の端から中庭をのぞく。優雅さんと結衣さんが向かい合って立っているのが見える。
「なに話してるのかな……」
「近づいてみよう」
恋野くんがこっそり茂みに隠れて、這いずるようにして進んで行く。私もそのあとをこそこそと進みながら、桜庭先輩と春菜の縁結びをした日のことを思い出す。あの日もこんなふうに恋野くんとここに隠れていたんだ。
「結衣の話って……なに?」
優雅さんが結衣さんの前でそう言ったのが聞こえた。
「優雅こそ……私に話したいことって……」
「結衣、先に言っていいよ」
「ううん、優雅が先に言って」
恋野くんが私の隣であきれたようにつぶやく。
「なにやってんだ。あいつら。さっさと話せよ」
「お互い警戒しちゃってるんだよ。自分が傷つけられるかもしれないって思って」
「あー、もう、じれってぇな。どっちからでもいいから、さっさと言えっての!」
恋野くんがいらいらしている。私は茂みの中からそっと手を伸ばす。
早くこの糸を結び付けちゃえばいいんだ。そうすればこの二人は結ばれる。
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