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結衣さんの指につながった糸が、風にそよそよと揺れている。私は精一杯手を伸ばす。だけどあと少しってところで、糸はふわりと手から離れる。
ああ、あと少し私の腕が長ければ……どうしようもない現実に悔しくなる。
その時、私の手に恋野くんの手が重なった。私より大きな男の人の手。心臓がどきんと跳ねる。しかも私の背中に、恋野くんの体がぴったりくっついている。
「もうちょっと……」
恋野くんの声が、耳のすぐ近くで聞こえる。なんだか頭がくらくらしてくる。
恋野くんは私の手をぐいっと引っ張り、糸に近づけた。私の手が赤い糸を握りしめる。
「よしっ、つかんだ!」
はっと横を向くと、ものすごい近くに恋野くんの顔が見えた。私の唇が恋野くんのほっぺにくっつきそうなくらい。
「ひいっ……」
へんな声が出て、体中の力が抜けた。
「うわっ」
力なく前に倒れていく私の背中に、恋野くんの重みが掛かる。
そのまま恋野くんの体が私を押しつぶすようにして、私たちは茂みの中から結衣さんたちの足元に倒れた。
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