第9話 ふたりのラストミッション

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「大雅……お前、マジで頭大丈夫か?」 「まぁ、見えないやつには信じてもらえないだろうけど、いま結衣の小指には赤い糸がついている」 「えっ」  結衣さんが驚いたように自分の指を見つめている。 「まぁ、見えないだろうけど。俺たちには見えるわけ。な? 紅子」  優雅さんと結衣さんが私に注目する。私はおどおどとうなずきながら言う。 「そ、そうなんです。ほんとに私たちには見えるんです」  結衣さんがもう一度指を見た。私はその指につながれた糸を、そっと手の上にすくい上げる。  重さなんか感じられないほどの細くて赤い糸。だけど二人を結び付ける大事な糸。 「これを優雅さんの指に結び付ければ……二人は結ばれるんです」  優雅さんが黙って私を見つめる。私の手のひらの上の糸を、恋野くんが手に取った。 「優雅。手、貸して」  優雅さんは呆然と恋野くんの顔を見ている。 「俺が結んでやるから」  優雅さんの手がほんの少し動く。恋野くんはその手をそっとつかんで、丁寧に赤い糸を結び付ける。優雅さんはじっとその様子を見下ろしている。 「これで大丈夫」  恋野くんの声を、優雅さんは黙って聞いていた。 「大丈夫だから」  恋野くんが振り返り、もう一度言う。結衣さんの顔を見つめて。  結衣さんの目がじんわりと潤んで、静かにうなずく。そしてくしゃっと笑顔になって、恋野くんに言った。 「ありがとう。大雅」  恋野くんがずっと欲しかった結衣さんの笑顔は、恋野くんの目にどんなふうに映ったんだろう。
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