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『わかったにゃ。だったら証拠を見せるにゃ』
「証拠?」
猫神さまが「にゃああああ」と長く鳴いた。ぶわっと強い風が吹く。私は「ひいっ」と小さく声を上げ、肩をすくめた。ざわざわと木がざわめいたと思ったら、私の目の前にピンク色の花びらがはらりと落ちてきた。
「さくらの……はなびら?」
どうして? いまは二月なのに……
思わず手を伸ばし、花びらをつかもうとする。
「え?」
その時私は、指先の違和感に気がついた。よく見ると細い糸が、左手の小指に絡まっている。
「なに……これ……」
糸は長く、赤い色をしていた。その糸の先を目で追うと、私の足元に座り込んだまま、ぽかんとしている茶髪男の姿が見えた。
「え?」
私はもう一度自分の指を確かめる。そしてゆっくりと糸のつながっている先を追いかける。細くて赤い糸は――茶髪男の小指につながっていた。
「な、なにこれ!」
私は思わずさけんでしまった。あわてて糸をほどこうとするけどほどけない。
『それは運命の赤い糸にゃ。人間がほどくことは不可能にゃ』
「は?」
茶髪男がつぶやいて、糸をひっぱる。
「いたっ! ひっぱらないで」
「はぁ? マジでつながってんのか、これ」
茶髪男は指から糸を引っこ抜こうとしたけど、どうしても抜けない。
「うそでしょ? なんでこの人と運命の糸がつながっちゃうの?」
「そうだ、冗談じゃねぇ。さっさとこの糸はずせ!」
『ダメにゃ。お前たちには、ニャーの仕事を手伝ってもらうことにしたにゃ。縁結びのミッションをクリアしたら、その糸をはずしてやるにゃ』
「縁結びのミッション?」
この猫神さまが、縁結びの神さまって本当だったの?
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