第9話 ふたりのラストミッション

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 二人を残して私と恋野くんは中庭を去った。昼休みが終わるまであと五分。二人が想いを伝え合うには充分時間はある。 「これで最後のミッションはクリアだな」  階段の下で恋野くんが言った。私の教室はここから廊下をまっすぐ、三年生の教室は階段の上だ。私たちはここでお別れ。 「うん。そうだね」  恋野くんが私を見た。なにか言いたそうな顔つきで。でもなにも言わないまま、私から顔をそむける。 「じゃあな」 「うん……」  私たちの指に、赤い糸はつながっていない。私と恋野くんは、今度こそ離れ離れだ。  恋野くんが階段をのぼっていく。私も背中を向けて廊下を歩く。 「あっ、紅子だ」 「おーい、紅子ちゃーん!」  廊下の向こうで春菜と葉月が手を振っている。小指についた赤い糸をキラキラさせて。  私は泣きそうになるのをぐっとこらえて、笑顔を作る。そして二人に向かって大きく手を振る。  だけど私の指には、やっぱり赤い糸はついてなくて。それが悲しくて、寂しくて。私は心の中で静かに泣いた。
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