第10話 新しい恋の糸は……

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「あっ、久しぶりぃ、紅子ちゃん!」  梅雨が明けて、夏の日差しが照り付けるようになったお昼前、渡り廊下で虹乃さんに会った。  私は四時間目の化学の授業の片づけが遅くなってしまい、急いで教室に戻ろうとしているところだった。  虹乃さんは誰もいない中庭をちらっと見てから私に言う。 「最近あそこでお昼食べないんだね? 大雅と」 「え、あ、はい」 「喧嘩でもしたの?」  虹乃さんが私の顔をのぞきこんでくる。私は首を横に振る。 「そういうんじゃないんです」 「じゃあどうして? あんなに毎日一緒にいたのに」  困った私の前で、虹乃さんが言う。 「大雅ってさぁ、最近なんか変わったよ。見た目も変わったし、授業もサボんなくなったし、喧嘩もしなくなったみたい。結衣ちゃんが復学して、優雅ともラブラブで、あいつどうなっちゃうんだろうって思ってたけどね」  私は黙って顔を上げる。もう恋野くんにはずっと会っていない。同じ学校にいるのに、不思議と偶然会うこともなくなった。これが「縁が切れた」っていうことなのかも。 「ただあいかわらずつまんなそうにしてるよ。ていうか、ぼうっとしてる。結衣ちゃんにフラれて本格的に生きる気なくしたか、もしくは……」  虹乃さんが指を唇に当てて言う。 「新しい恋に落ちたか」 「えっ!」  私は思わず声を上げてしまった。虹乃さんが私をじっと見て、それからにっと笑いかける。
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