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「気になる? 紅子ちゃん」
私ははっとして首を横に振る。
「いえっ! ぜんぜんっ!」
すると虹乃さんが声を上げて笑った。
「私も全然! もうあんなやつに興味ないわ。てかあいつに関わっちゃった私の時間、全部返して欲しいわ」
ほんとかな……虹乃さん、あんなに恋野くんのこと好きだったのに。
虹乃さんは私を見て、ふっと笑う。
「ほんとに不思議なんだけどさ。この前まで一生忘れられないって思うほど大好きだった人のこと、忘れられるってあるんだよ。うーん、忘れるってわけじゃないか。なんていうか、いい思い出に変わるっていうの?」
私はきょとんと虹乃さんを見つめる。虹乃さんはくすっと笑って私の髪をふわふわっと撫でる。
「ちょっと難しかったかな? 紅子ちゃんには」
あ、もしかして私、子ども扱いされてる?
虹乃さんは口を尖らせた私を見て、またけらけらと笑った。
「私も新しい恋するぞー! 大雅より百倍、いや百万倍いい男見つけてやるからなー!」
虹乃さんが叫ぶから、近くを歩いている生徒たちがちらちらとこっちを見た。私は恥ずかしくなって肩をすくめる。
「じゃあ、またね! 紅子ちゃん」
「あ、はい」
呆然とする私を残し、虹乃さんが去っていく。
まっすぐ前を向いて歩いていく虹乃さんは、なんだかすごくカッコよく見えた。
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