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教室に戻ると、私は葉月に声をかけた。
「葉月、お待たせ。お弁当食べよ」
「うん」
葉月がにっこり笑ってくれる。
最近私は葉月とお弁当を食べている。春菜はあいかわらず桜庭先輩とランチデートだし、結衣ちゃんも屋上で優雅さんと一緒だ。
「でもいいの? 紅子ちゃん」
お弁当を広げながら、葉月が言う。
「最近全然、恋野先輩とご飯食べてないけど」
また聞かれてしまった。
「うん。いいの。もう恋野くんとは……縁が切れたし」
「縁?」
「そう。だからもういいんだ」
私はさっき虹乃さんから聞いた言葉を思い出す。
『新しい恋に落ちたか』
もし恋野くんに好きな人ができたなら。誰かと付き合うことになるのなら。
私はそれを応援してあげなくちゃいけない。
私と恋野くんの指にはもう、運命の糸なんかつながってないんだから。
「だったらそれ、また結んじゃえばいいんじゃないかな?」
突然葉月が言った。
「え?」
私は驚いて、箸を持った手を止める。
「切れたらまた結べばいいよ。だって紅子ちゃん、ほんとは恋野先輩とご飯食べたいんでしょう?」
葉月がほんわかした笑顔で言う。だけど私はそんな葉月の前で首を振る。
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