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「だめ。そんなことできないよ。きっと恋野くんには好きな人がいるし……」
「そうなの? 紅子ちゃん、恋野先輩に聞いてみたの?」
私ははっと顔を上げる。
「紅子ちゃんの気持ち、恋野先輩に伝えてみたの?」
私の顔が熱くなる。目の前の葉月をまともに見れない。
「想いを伝えたらだめなんてことはない。好きになったらだめなんてこともない。そう私に言ってくれたのは、紅子ちゃんだよ」
「葉月……」
葉月が私の前でやさしく微笑む。私の目からなぜか涙がこぼれる。
「私……私ね……」
「うん」
葉月のやわらかな手が、私の手をにぎってくれる。
「恋野くんとまたご飯食べたい。あの中庭で話をしたい」
「うん」
「恋野くんに……会いたいよ……」
葉月の手をにぎりしめてそう言った。葉月は私にやさしく言う。
「だったら会いに行けばいいよ。紅子ちゃんならできるよ」
葉月の声が胸に沁み込む。
「頑張って、紅子ちゃん」
にっこり微笑んだ葉月の顔が、涙でぼんやりにじんで見えた。
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