129人が本棚に入れています
本棚に追加
/185ページ
「だ、だったら、この人だけにしてください! 私はカンケーないんですから!」
男がじろっと私をにらむ。
だってそうでしょ? チョコを食べて神さまを怒らせたのはこの人なんだから。私はたまたまここにいただけで。
『たしかにお前に恨みはないにゃ。焼き芋もらった恩もあるにゃ』
やっぱり昨日の猫も、猫神さまだったんだ。
「そうですよね! だったら私は解放してください!」
『ダメにゃ。この男だけでは頼りないにゃ。お前も一緒に仕事してもらうにゃ。二人でなんとか一人前といったところにゃ』
「そんなっ……ひどい……」
私はぺたんと地面に膝をついた。茶髪男がそんな私にぼそっと言う。
「まぁ、もともとはお前があんなところにチョコ置くのが悪いんだろ。あそこにチョコがあったから、俺が食っちゃったわけだし」
「わ、私がチョコを置いたせいだって言うの!」
そこまで言って、口を閉じた。たしかに、私があそこにチョコを置かなければ。私がチョコを作らなければ。私が先輩を好きにならなければ……
ぽろっと涙がこぼれた。涙はかさぶたになった、膝の傷の上に落ちる。
こんなところで泣きたくなんかないのに……もう先輩のことは忘れようとしてたのに……どうしても涙が止まらない。
ぐずぐずと泣き出した私を、茶髪男が見ている。
見ないでよ。恥ずかしい。泣きたくて泣いてるんじゃないんだから。これは勝手に涙が……
最初のコメントを投稿しよう!