第1話 猫神さまと運命の赤い糸

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『男の名前は……『桜庭(さくらば)(ひかる)』というにゃ』 「えっ」  私は思わず声を上げた。 「桜庭……先輩?」  心臓がドキドキと音を立てる。震え出す手をぎゅっと握る。そんな私の顔を、茶髪男がちらっと見てからつぶやいた。 「バスケ部の桜庭だな」 「し、知ってるの?」 「ああ、知ってるよ。同じクラスだし」 「うそぉ……」  ていうことは、この人は先輩と同じ二年生か。すると猫神さまが、こほんと咳ばらいをして私たちに告げる。 『その男の想い人の名前を言うにゃ』  私はごくんと唾を飲み込んだ。  先輩の想い人。先輩の好きな人。先輩と……これから縁が結ばれる人。 『女の名前は……『南春菜』にゃ』 「え……」  私は口を開いたまま呆然とした。 「南……春菜……」  茶髪男が私に聞く。 「知ってんの?」  私は静かにうなずいた。 「私の……親友だから」  茶髪男は黙って私を見ていた。私はそっと視線をそむけてうつむいた。  耳に、昨日聞いた先輩の声が聞こえてくる。 『ごめん。俺、好きな子がいるから』  先輩の好きな子って……春菜のことだったんだ。
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