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私は学校への道を歩いていた。隣には茶色い髪の男がいる。
さっき名前を教えてくれた。恋野大雅っていうそうだ。私より一つ年上の二年生。桜庭先輩と同じクラス。部活は「だるいから」という理由で入っていないらしい。
「やりたくなかったらやめるか?」
ずんっと落ち込んだままの私に向かって、恋野くんが言った。私ははっと顔を上げて隣を見上げる。
恋野くんは背が高い。私が小さいせいもあるけど、並んでみると大人と子どもくらいの差がある。
恋野くんは自分の小指を、曲げたり伸ばしたりしながら眺めていた。小指に絡まった赤い糸の先は、私の小指につながっている。
どんなに動いても、どんなに離れても、この糸は自由自在に伸びたり縮んだりしつつ、私たちから離れないらしい。
「だいたいなんで俺たちが、あの猫の言いなりにならなきゃなんねぇんだよ」
でももしこの仕事をやらなかったら……猫神さまはこの糸を切ってくれないだろう。
私たちの糸は、ずっとつながったまま……
それは困る。絶対困る。恋野くんだって困るだろう。私なんかと結ばれてしまったら。
私は首を横に振った。
「ううん、やる」
桜庭先輩は春菜が好きなんだ。縁結びの神さまに、お願いするほど好きなんだ。私の仕事は、二人をくっつけること。
きっとできる。先輩がそれで幸せになれるなら、私はなんでもする。
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