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「春菜!」
休み時間、私は真っ先に春菜の席に駆け寄った。
「紅子?」
春菜はやっぱり心配そうな顔をしている。
「あの、春菜。私ね、桜庭先輩にフラれちゃった」
「うん……」
春菜が悲しそうな顔をした。私がフラれてしまったことを、本当に悲しんでくれているんだ。
だったら、だったら今度は私が、春菜の想いを一緒に感じたい。
「だからね、もう私に遠慮とかしないでいいから」
「え?」
春菜が驚いた表情を見せる。
「春菜の好きな人……教えて? 私、春菜の応援がしたい」
「紅子……」
春菜がまっすぐ私の顔を見た。そして静かにうつむく。
「ごめん。紅子。私、ずっと言えなかったんだ」
私は黙って春菜の声を聞く。
「言わなきゃ言わなきゃって思ってたんだけど……一生懸命な紅子の顔を見るとどうしても言えなくて……」
「うん……」
言えない雰囲気を作ってしまったのは、この私だ。
「私も桜庭先輩のこと……好きなんだ」
春菜の前でうなずいた。やっぱりそうだったんだ。春菜も先輩のこと……
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