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「春菜。告白しようよ」
「えっ」
春菜が驚いた顔で私を見る。
「今日の放課後、先輩に告白しよう! 私、先輩を中庭に呼び出すから」
「え、ちょっと待って、そんな急に……」
「春菜。チョコ、持ってるんじゃないの?」
春菜がはっとした顔をする。
バレンタインの前日、二人で作ったチョコレート。春菜は自分で作ったチョコレートを、大事そうに持って帰っていた。渡す人なんかいないよって笑っていたけど……
「うん……実はまだ持ってるの……渡せるわけないって思ってたくせに、捨てる勇気もなくて……いまもカバンの中に……」
「だったらそれ、渡そう! 一日遅れちゃったけど、桜庭先輩に!」
春菜が私のことを見ている。私は春菜に言われた言葉をそのまま返す。
「頑張って! 春菜!」
私の前でうなずいた春菜の小指には、しっかりと赤い糸が結ばれていた。
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