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「あの……桜庭先輩のこと、どうやってここまで連れてきたの?」
恋野くんはじろっと私を見てから、前を向いて口を開く。
「『南春菜って子、かわいいよな。俺、声かけてみようかな』って言ったら、あっさり白状しやがった。『あの子のこと、先に好きになったのは俺だ。去年バスケ部に入部してきた時から好きだったんだ』って」
ああ……やっぱりそうなんだ。わかっていたけど、やっぱりつらい。
「なのにあいつ、『でも昨日あの子にチョコもらえなかった』とか、ぐちぐち言い始めるから、『だったらさっさと告っちゃえよ。じゃないと俺が先に告るぞ』って脅したら、『お前なんかにやるか』だと。なぁ、お前なんかって失礼だと思わねぇ? お前なんかって」
そんなことはどうでもいいけど……やっぱり先輩は春菜からチョコもらいたかったんだ。私なんかじゃなくて……
またずしんと落ち込んでしまう。
「そんで俺が春菜を呼び出してやるってことになったんだけど……あいつなにぐずぐずしてんだよ」
恋野くんが茂みの中から先輩たちをのぞき、イライラした口調で言う。
二人は向かい合ったまま、何も言えずにもじもじしている。
「は、早く、糸を結ばないと」
春菜の指からは、私が結んだ糸がだらんと垂れ下がっている。
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