第2話 涙のファーストミッション

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「できた!」  恋野くんが嬉しそうに叫ぶ。それと同時に春菜が駆け寄り、恋野くんのことを突き飛ばした。 「やめてください! 桜庭先輩に触らないで!」  春菜に突き飛ばされた恋野くんが、植木をなぎ倒し、私のそばにしりもちをつく。私は思わず声を漏らしそうになり、あわてて口元を押さえ茂みの奥に隠れた。 「先輩っ、これっ!」  春菜が持っていた包みを先輩に差し出す。 「受け取ってください!」  先輩は春菜の前で呆然としている。 「私も……桜庭先輩のことが……好きです」  顔を真っ赤にした先輩が、春菜の作ったチョコレートを両手でそっと受け取った。 「ありがとう。嬉しい」  本当に嬉しそうに笑う先輩の前で、春菜も微笑む。  二人の小指と小指には、運命の赤い糸がしっかりとつながっている。 「いってぇな……」  私の前でしりもちをついている恋野くんがつぶやいた。私はそんな恋野くんの制服の袖を引っ張る。 「紅子?」  恋野くんが私を見た。私は恋野くんから顔をそむける。  だけど、こらえようとした涙が、どうしてもこらえられない。  私は恋野くんの袖をつかんだまま、声を出さずに泣いた。  恋野くんは黙って手を伸ばし、私の頭をぽんぽんっと軽く撫でてくれた。
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