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「なんか……悪かったな」
校門を出ると、私の隣で恋野くんがつぶやいた。
中庭で二人をくっつけたあと、先回りして教室で待っていた私に、「先輩と帰ることになった」と、春菜が言いにくそうに伝えてきた。私はそんな春菜に向かって、笑顔で手を振ることができた。
そして一人で昇降口を出た時、そこで恋野くんが私のことを待っていたのだ。
「悪かったって……なにが?」
「いや、あの時俺、勝手に結んじゃったけど……お前、手止まってたじゃん? やっぱり嫌だったんじゃないかなって」
恋野くんはちらっと私を見て、続けて言う。
「だってお前……桜庭のこと、好きだったんだろ?」
「え……なんでそれを……」
つい口走って、手で口を覆う。恋野くんはポケットの中から何かを取り出す。
「これ」
私は目を見開いた。恋野くんの手の中の小さなカードは……
「昨日食ったチョコの中に入ってた」
「きゃー! 返して!」
恋野くんの手からカードをひったくる。そういえばチョコの中に、これを入れていたのを忘れてた。
『桜庭先輩 好きです 花園紅子』
恥ずかしさがこみあげてきて、消えてしまいたい。
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