第2話 涙のファーストミッション

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「あの糸、結ばないってこともできたのに」  恋野くんの声が耳に響く。だけど私は首を横に振る。 「いいの……たしかに春菜が先輩と付き合うのを見るのはつらいけど……でも仕方ない。私の運命の赤い糸は、先輩とつながってなかったってことだから」  恋野くんが自分の小指を見ながらつぶやく。 「仕方ない……か」  私も自分の指を見る。指に結ばれた赤い糸を目でたどれば、それは恋野くんの小指につながっている。あらためて見てみたら、なんだかすごく恥ずかしくなった。 「そ、それに、先輩と春菜をくっつけなかったら、この糸切ってもらえないんだから!」 「ああ、そうだった。それは困るな」  恋野くんは私を見て、明るい声で言った。 「じゃ、とにかく、これ切ってもらおうぜ!」 「うん、そうだね」 「さっさとこんなもんぶった切って、新しい男見つけろよ」  新しい男って……でも恋野くんの言いたいことはわかる。 「うん、そうする」 「じゃあとっとと行くぞ! あのうさん臭い猫神のとこに!」  恋野くんが私の手をとって、走り出した。私はちょっとどきっとしてしまう。  男の人に手を握られたことなんて、なかったから。  恋野くんと手をつないで、神社に向かって走った。  私たちの小指と小指につながった赤い糸が、風にそよそよと揺れていた。
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