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「は? 切れないってなんでだよ? 俺たちちゃんとやることやったぜ?」
神社に行くと、猫神さまがキャットフードをぼりぼり食べていた。いつの間にか桜庭先輩がここに来て、願いを叶えてもらったお礼にキャットフードをお供えしていったそうだ。
先輩ってば、やること早いし、信仰深いし、ちゃんとここの神さまが猫の神さまだってことまで知っているなんて……さすが私の好きになった人だ。
感心している私の前で、猫神さまが言う。
『お前ら、やり方がめちゃくちゃなんにゃ。仮にも縁結びの神さまのお仕事。もっとスマートに美しくできんのかにゃ』
「ああ? やり方なんてどうだっていいだろ? 糸がつながったんだから」
『あんなやり方、ダサすぎるのにゃ』
いまにも猫神さまに殴りかかりそうになっている恋野くんを、私は止めた。
「あの、じゃあどうすれば……」
『仕事はまだまだいっぱいあるのにゃ。ニャーが認めるまで、お前たちは働くのにゃ』
「はー? なんだよ、それ! まだこき使うつもりかよ!」
『ワンミッションクリアすれば、その糸を切るとは言ってないにゃ』
猫神さまはそう言うと、またぽりぽりとキャットフードをかじる。
「ふざけんな! 早くこの糸切れ! デブ猫!」
すると猫神さまは四つん這いになり、ぶわっと毛を逆立たせ、「んにゃーご!」と怖い声で恋野くんをにらみつけた。
恋野くんはあわてて、私の後ろに隠れる。やっぱり恋野くん、猫のことが苦手みたい。
『次のミッションは、またお前らを呼び出してここで伝えるにゃ。それまでさらばにゃ』
猫神さまがそう言った瞬間、ふわっと白い煙が舞って、ただの三毛猫になった。猫は「にゃー」とひと声鳴くと、森の奥へ消えていった。
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