第2話 涙のファーストミッション

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「なんなんだよ、もう……」  私の後ろから恋野くんの声がする。私は振り返って恋野くんに言う。 「仕方ないね……これ以上、猫神さまを怒らせない方がいいと思うよ? それよりちゃんと言うこと聞いて、早くこの糸切ってもらわないと……」  じろっと鋭い目でにらまれた。すっかり忘れていたけど、そういえばこの人、ヤンキー三人相手に喧嘩していたんだっけ。  私はぺこっと頭を下げて、恋野くんに言う。 「ではっ、またいつか!」  ぶすっと不満そうな恋野くんを残して、家に向かって走った。  風がふわっと吹いて、私の肩にかかる髪と、小指についた赤い糸を揺らす。  私は髪に手を当てて、さっき恋野くんに頭を撫でられたことを思い出す。  ちょっと胸が熱くなってそっと顔を上げたら、糸とおんなじ赤い色の空が、どこまでも遠く広がっていた。
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