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「それに強引に結ぶって言っても……突然知らない人たちの指に触らなきゃいけないんだよ? そんな変態っぽいこと、私にはできないよ」
そうなんだ。次のミッションのターゲットは……私の友だちでも知り合いでもない。
この学校の生徒会長、三年生の『椿律子』先輩と、同じく生徒会の書記をやっている三年生、『梅谷良介』先輩。
椿会長の名前と顔くらいはさすがに知っているけど、私のような一般人や恋野くんみたいな不良っぽい人とは、縁のない人たちだ。
その二人の小指と小指に、私たちが赤い糸を結び付けなくちゃいけないなんて……ハードル高すぎる。
「あ、そういえば五時間目、生徒総会があるね。二人のこと偵察しなくちゃ」
「じゃあお前やってきて。俺はサボる」
恋野くんがベンチの上にごろんと寝ころんだ。ふわっとした茶色い髪が、私の太ももあたりにあたって、私はあわてて腰をずらす。
「ちょっと! サボるってずるいよ!」
「うるせぇな。俺は寝るんだから静かにしろ」
もう、なんなのよ。私たちの糸が切れなかったら、恋野くんだって困るでしょ?
赤い糸がつながっている左手を握りしめ、ぶうっと頬を膨らませていたら、渡り廊下のほうから声がかかった。
「紅子ー。教室戻ろう」
見るとランチバックを抱えた春菜が私を呼んでいる。春菜は奥の校舎の空き教室で、桜庭先輩とお弁当を食べてきたのだ。
「いま、行くー」
私はお弁当箱を片付けると、目を閉じてしまった恋野くんをちらっと見てから、春菜のもとへ駆け寄った。
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