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ポケットのスマホがブブっと震える。私はぐすぐすと鼻をすすってから、それを取り出す。
画面を開くと春菜からのメッセージが入っていた。
『紅子。どうだった? 大丈夫?』
春菜が心配している。先輩にバレンタインのチョコを渡したあと、春菜の待つ教室に戻るはずだったのに、私がそのまま帰ってしまったからだ。
高校に入学してすぐに仲良くなった春菜は、しっかり者のお姉さんタイプで、のろまで頼りない私をいつもフォローしてくれる。
私はティッシュを取り出し鼻をかんでから、春菜にメッセージを送った。
『ごめんね、春菜。だめだった』
すぐに既読の文字がつく。だけどこんな報告をされても、春菜だって返事に困るだろう。
『でも大丈夫だよ。ちょっとショックで学校飛び出しちゃったけど、もう落ち着いたから』
明るい顔文字を入れながら、できるだけ重くならないように返事をする。
『明日ちゃんと話すね。ほんとにごめんね』
最後に『ごめん!』と猫が謝っているスタンプを送った。ほんの少し間があいてから、『了解』と、春菜の好きなキャラクターのスタンプが返信されてきた。
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