第1話 猫神さまと運命の赤い糸

4/20

129人が本棚に入れています
本棚に追加
/185ページ
 ポケットのスマホがブブっと震える。私はぐすぐすと鼻をすすってから、それを取り出す。  画面を開くと春菜からのメッセージが入っていた。 『紅子。どうだった? 大丈夫?』  春菜が心配している。先輩にバレンタインのチョコを渡したあと、春菜の待つ教室に戻るはずだったのに、私がそのまま帰ってしまったからだ。  高校に入学してすぐに仲良くなった春菜は、しっかり者のお姉さんタイプで、のろまで頼りない私をいつもフォローしてくれる。  私はティッシュを取り出し鼻をかんでから、春菜にメッセージを送った。 『ごめんね、春菜。だめだった』  すぐに既読の文字がつく。だけどこんな報告をされても、春菜だって返事に困るだろう。 『でも大丈夫だよ。ちょっとショックで学校飛び出しちゃったけど、もう落ち着いたから』  明るい顔文字を入れながら、できるだけ重くならないように返事をする。 『明日ちゃんと話すね。ほんとにごめんね』  最後に『ごめん!』と猫が謝っているスタンプを送った。ほんの少し間があいてから、『了解』と、春菜の好きなキャラクターのスタンプが返信されてきた。
/185ページ

最初のコメントを投稿しよう!

129人が本棚に入れています
本棚に追加