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「でも恋野先輩って、ちょっとカッコいいよね?」
「えっ!」
思いもよらない言葉に、私は腰を抜かしそうになった。
だってあんなチャラくて不良みたいな男、さわやかなスポーツマンの桜庭先輩に比べたら、全然カッコよくなんてない。
「あれ、紅子はそう思ってないの?」
「思ってるわけないじゃん! 春菜は思ってるの?」
「まぁちょっとは。だって女子生徒の中では有名でしょ、恋野兄弟って言ったら」
「恋野兄弟?」
ぽかんとした私の肩を、春菜がとんとんっと叩く。
「あ、ほら、あの人。恋野兄弟のお兄さんのほう」
「えっ?」
私はまた驚いて、春菜の視線を追いかけた。壇上に男子生徒が立っている。生徒会で会計をやっている人らしい。
さらりとした黒髪で、きちんと結ばれたネクタイ。もちろんブレザーのボタンは開いてなくて、ピアスだってついていない。でも顔は……恋野くんに似てる。
そしてその人が登場した途端、女子生徒からちょっとした歓声が上がった。
「あ、あの人、恋野くんのお兄さんなの?」
「やだ、紅子、そんなことも知らなかったの?」
知らない、知らない。だって私は入学してからずっと、桜庭先輩しか見てなかったんだもん。
そんな私に春菜が教えてくれた。
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