第3話 恋する生徒会長

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「あ、大雅くん」  その時、私の耳に女の人の声が聞こえた。ふと声の主を見ると、そこにはあの椿会長が立っていた。私は思わず視線を正す。 「こんなところにいた。優雅くんから聞いたわよ。昼休みは生徒指導の先生に呼ばれていたはずでしょう?」  椿会長が赤い縁の眼鏡をくいっと押し上げて、こっちに向かって歩いてくる。姿勢を正したまま固まっている私の隣で、恋野くんが「ちっ」と舌打ちした。  艶のある黒髪を後ろで一つに束ね、背筋をまっすぐ伸ばし、はきはきと話す椿会長は、超がつくほど真面目だという噂だ。でも猫神さまに縁結びのお願いをしに来たのは、この椿会長なのだという。  こう言ってはなんだけど……ちょっと意外だ。  会長はベンチに座っている恋野くんのことを見下ろして言った。 「またピアスなんかつけて。校則違反よ。すぐにはずして」  会長がまるで先生のように言う。もしかして恋野くんはいつもこんなふうに、会長に怒られているのかもしれない。たしかにこれは『仲がいい』とは言えないかも。
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