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「うるせぇな、あんた。あいかわらず」
「早くはずしなさい。私が預かって、先生に渡すから」
会長が恋野くんの前に手のひらを差し出した。恋野くんはじっとその手を見つめている。
「大雅くん!」
「はいはい。わかりました」
いい加減な返事をした恋野くんが、左耳についていたシルバーのピアスをはずす。そしてそれを会長の手のひらに置く……ふりをして、反対側の手でいきなり会長の手をつかんだ。
「なっ、なにするの!」
会長がひるんだ瞬間、恋野くんはポケットからなにかを取り出した。
「あっ」
あれは……運命の赤い糸。
恋野くんは素早くそれを会長の小指に結び付けた。
「離してよっ」
会長があわてて恋野くんの手を振り払う。その小指から、ゆらゆらと赤い糸がぶら下がっている。
ナイス! 恋野くん!
心の中で叫んだ私に、恋野くんは満足そうに笑いかけて、それから会長の手にピアスをのせた。
「これあんたにあげるよ。ちょっとくらいオシャレしたほうが、男にモテると思うけど?」
会長はちょっと顔を赤くして、ピアスをぎゅっと握りしめる。
「こ、これは預かっておきます!」
そして逃げるように、背中を向けて走って行ってしまった。
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