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「すごい! 結ぶの早かったね」
私は恋野くんの前で手を叩く。かなり強引ではあったけど。
「まぁ、特訓したからな」
「え、特訓?」
「人の指に糸結ぶの、たぶん俺、日本一早いよ」
恋野くんが自信ありげに胸を張って、ははっと笑う。
ああ、この前苦戦していたから、きっと本当に練習したんだ。この人意外と真面目なのかも。
「でももう片方はどうしよう」
相手の男の人、つまり椿会長の想い人は、同じ生徒会の梅谷先輩。
この前壇上で見たはずだけど、あんまり印象に残っていない。たしか眼鏡をかけた、ひょろっと細くておとなしそうな人だったと思う。
会長の指にぶら下がっている糸は、まだそんなに長くなく、伸び縮みなんてしない。だから会長の近くに、梅谷先輩を近づけないといけない。
私と恋野くんの糸のように、自由に伸びてくれるなら、相手の人に結びやすいのに……けっこう面倒くさいんだ。縁結びって。
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