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「俺、いい作戦考えちまった」
恋野くんがいたずらでも思いついたような顔つきで、にやりと笑う。
「今日の放課後、生徒会室にあのくそ生意気な生徒会長を呼び出して、俺が襲うふりをする」
「えっ」
「あの女、男に慣れてなさそうだから、きっとキャーキャー騒ぐはずだ」
私はさっきの、会長のあわてた様子を思い浮かべる。
「そこにお前が梅谷を連れてくる。襲われてる会長を梅谷が助けて、そのすきに糸を結んで、めでたしめでたしってわけ」
「そ、そんなのうまくいくはずないよ」
「絶対うまくいくって」
恋野くんは人ごとのように気楽に言う。
「じゃあ放課後。お前ちゃんと梅谷連れて来いよ」
「そ、そんな……」
チャイムが鳴って、恋野くんが去っていく。
どうしよう。上手くいく自信が全然ないけど……
私は自分の小指を見つめる。指につながった赤い糸は、去っていく恋野くんに向かってずうっと伸びている。
この糸を断ち切るために……やるしかない。
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